あさ

揺れている私は
雨腐った
むかしの街を探そうとしている
なぜか色は豊かで
そこ代わりに音はない
風も吹かない
匂いもない
砂埃の舞った眼で
それを味わう自分がいる
尊敬だよ、経緯を払おう
生きにくいの体現者である
窓を開いたときの風は優しかった
かみさまはいるのか?
それだけが耳に残っている
骨や皮は変わらず
わたしだけ私となり
今こうして立っている
やーいと叫ぶあの子たちはどこだ
忘れることの罪を知るのである

ひる

先ほど吐いたシチューが甘く
豊かな道の散歩
意味の無い情緒を引きずった
また忘れている私だ
きみのいる空がゆれる
きみのいた床がにじむ
きみのいない風が冷えた
局地的猛暑だ
あついあつい
突発的スコールだ
みえないみえない
飲み干した水に息を注いだ
誰かに差し出したい気持ちになった

よる

雑な乗り心地も気にならず
膨らんだ茶袋は
畳まれることを待っている
車窓にちらついた疑心暗鬼
汚い夜の本気が見えた気がした
泣いたってひとり
膝の感覚に陽が沈む
アップルパイは冷えていた
ぱりぱりに焼きあがりやがって
ちくしょう、おいしそうじゃないか
こういうとき
嫌味なほどにりんごは私に甘いんだ
そんなきみの過去を思い出した
そうでもないな
揺れていてもひとり