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詩は弦楽の/(作)コンスタンチン・ヴァーギノフ、(訳)小澤裕之

詩は弦楽の夜の獄舎に あかあか燃える、思いがけない、聾の、賜物である。賢しらな自然はすべて 私から奪った銀器の如く けたたましい才能を 取りあげた。 そうして私は 塔から荒野に降下して花盛りの階段を偲びきわめて困難なバイオリンを背負い 辛うじて階段をよじ登った波濤と世界を意の儘に するために。 こうして私は若き日に 狂気を求め己が意識を光の射さぬ暗闇へ 追いやった美しい詩の花が それを故郷の土のごと 養分と するように。 1924年9月20日~10月10日 作・コンスタンチン・ヴァーギノフ1899年生まれ。詩人・小説家。1920年代に、ペトログラード(レニングラード)中の文学グループを渡り歩いた。ハルムスやヴヴェジェンスキーが所属した「オベリウ」もその一つ。詩のほか、『山羊の歌』など4作の長篇小説がある。1934年没。 小澤 裕之関東学院大学非常勤講師。専門はロシア文学。著書に『理知のむこう――ダニイル・ハルムスの手法と詩学』(未知谷、2019)、訳書に『言語機械――ハルムス選集』(未知谷、2019)。