詩は弦楽の夜の獄舎に あかあか燃える、思いがけない、聾の、
賜物である。
賢しらな自然はすべて 私から奪った
銀器の如く けたたましい才能を 取りあげた。

そうして私は 塔から荒野に降下して
花盛りの階段を偲び
きわめて困難なバイオリンを背負い 辛うじて階段をよじ登った
波濤と世界を意の儘に するために。

こうして私は若き日に 狂気を求め
己が意識を光の射さぬ暗闇へ 追いやった
美しい詩の花が それを
故郷の土のごと 養分と するように。

1924年9月20日~10月10日

作・コンスタンチン・ヴァーギノフ
1899年生まれ。詩人・小説家。1920年代に、ペトログラード(レニングラード)中の文学グループを渡り歩いた。ハルムスやヴヴェジェンスキーが所属した「オベリウ」もその一つ。詩のほか、『山羊の歌』など4作の長篇小説がある。1934年没。