Category: Poetry

詩は弦楽の/(作)コンスタンチン・ヴァーギノフ、(訳)小澤裕之

詩は弦楽の夜の獄舎に あかあか燃える、思いがけない、聾の、賜物である。賢しらな自然はすべて 私から奪った銀器の如く けたたましい才能を 取りあげた。 そうして私は 塔から荒野に降下して花盛りの階段を偲びきわめて困難なバイオリンを背負い 辛うじて階段をよじ登った波濤と世界を意の儘に するために。 こうして私は若き日に 狂気を求め己が意識を光の射さぬ暗闇へ 追いやった美しい詩の花が それを故郷の土のごと 養分と するように。 1924年9月20日~10月10日 作・コンスタンチン・ヴァーギノフ1899年生まれ。詩人・小説家。1920年代に、ペトログラード(レニングラード)中の文学グループを渡り歩いた。ハルムスやヴヴェジェンスキーが所属した「オベリウ」もその一つ。詩のほか、『山羊の歌』など4作の長篇小説がある。1934年没。 小澤 裕之関東学院大学非常勤講師。専門はロシア文学。著書に『理知のむこう――ダニイル・ハルムスの手法と詩学』(未知谷、2019)、訳書に『言語機械――ハルムス選集』(未知谷、2019)。

詩 連作/山田桃

あさ 揺れている私は雨腐ったむかしの街を探そうとしているなぜか色は豊かでそこ代わりに音はない風も吹かない匂いもない砂埃の舞った眼でそれを味わう自分がいる尊敬だよ、経緯を払おう生きにくいの体現者である窓を開いたときの風は優しかったかみさまはいるのか?それだけが耳に残っている骨や皮は変わらずわたしだけ私となり今こうして立っているやーいと叫ぶあの子たちはどこだ忘れることの罪を知るのである ひる 先ほど吐いたシチューが甘く豊かな道の散歩意味の無い情緒を引きずったまた忘れている私だきみのいる空がゆれるきみのいた床がにじむきみのいない風が冷えた局地的猛暑だあついあつい突発的スコールだみえないみえない飲み干した水に息を注いだ誰かに差し出したい気持ちになった よる 雑な乗り心地も気にならず膨らんだ茶袋は畳まれることを待っている車窓にちらついた疑心暗鬼汚い夜の本気が見えた気がした泣いたってひとり膝の感覚に陽が沈むアップルパイは冷えていたぱりぱりに焼きあがりやがってちくしょう、おいしそうじゃないかこういうとき嫌味なほどにりんごは私に甘いんだそんなきみの過去を思い出したそうでもないな揺れていてもひとり 山田 桃福岡出身芸術大学在学、ツイッター詩人。

A Moving Walk/南ひかる

I used to work in central Tokyo For many hours at a travel bureau. Home and work, back and forth, door to door. My office was on the…