Author: 山田 桃

詩 連作/山田桃

あさ 揺れている私は雨腐ったむかしの街を探そうとしているなぜか色は豊かでそこ代わりに音はない風も吹かない匂いもない砂埃の舞った眼でそれを味わう自分がいる尊敬だよ、経緯を払おう生きにくいの体現者である窓を開いたときの風は優しかったかみさまはいるのか?それだけが耳に残っている骨や皮は変わらずわたしだけ私となり今こうして立っているやーいと叫ぶあの子たちはどこだ忘れることの罪を知るのである ひる 先ほど吐いたシチューが甘く豊かな道の散歩意味の無い情緒を引きずったまた忘れている私だきみのいる空がゆれるきみのいた床がにじむきみのいない風が冷えた局地的猛暑だあついあつい突発的スコールだみえないみえない飲み干した水に息を注いだ誰かに差し出したい気持ちになった よる 雑な乗り心地も気にならず膨らんだ茶袋は畳まれることを待っている車窓にちらついた疑心暗鬼汚い夜の本気が見えた気がした泣いたってひとり膝の感覚に陽が沈むアップルパイは冷えていたぱりぱりに焼きあがりやがってちくしょう、おいしそうじゃないかこういうとき嫌味なほどにりんごは私に甘いんだそんなきみの過去を思い出したそうでもないな揺れていてもひとり 山田 桃福岡出身芸術大学在学、ツイッター詩人。